現在C2Cサービスのグロースを担当している三浦(@fumi_12_20)です。
この記事では『グロースハック完全読本』の内容をまとめました。この本が読みたいけど読めていない!という方、「グロースハックとは一体何なのだ」とお思いの方にも「グロースハック」について今よりも理解できる内容と思っています。
目次
グロースハック完全読本とは
伝説のグロースハッカーであり、グロースハックの親とも言われているショーン・エリスによって書かれた本です。
彼はDropboxのグロースにも携わり事業の成功に導き、自身でGrowthhackers.comというコミュニティも立ち上げており、グロースハッカー業界では彼の名を知らない人はいないと言っても過言ではないほどの人物です。
“日本” で “グロースハッカー” と言えば僕の中では現在ZOZOテクノロジーズでCINOを務める金山さんが一番に思い浮かびます。
VASILYのブログと、「いちばんやさしいグロースハックの教本」でグロースハックを学習させていただいていたのですが、本著によると金山さんはGrowthhackeres.comを見てグロースハックの知識を深めていたとのことです。
伝説のグロースハッカーが書き記した世界的グロースハックの内容、「まとめないわけにはいかない!」と思ったので数ヶ月ぶりに記事を書いています。では早速中身に入っていきましょう。
マストハブサーベイ ~作っているサービスの価値って?~

今作っているサービスはどのくらい人々に影響を与えているのだろうか?1億人?100万人?1000人?
サービスを仕掛ける側は自分のサービスを愛し、入れ込んでしまいすぎる傾向があるため、客観的な視点をおろそかにしがちです。そんな時はユーザに意見を聞くのがベストです。
この本に書かれていたのは、「もし明日このプロダクトがなくなったらどれくらいがっかりしますか」という質問をユーザーに行うことです。
これをマストハブ・サーベイと呼び、自分らのサービスがどのくらい役に立っているのかを定性的に調査する方法です。
回答を
- すごくがっかりする
- 少しがっかりする
- がっかりしない(役に立たない)
- 該当しない(すでに使っていない)
の4つに分け、答えてもらいましょう。
回答の4割が「すごくがっかりする」と答えば、そのプロダクトは世の中の役に立っていいと言って良い。つまり、PMFを達成したと言って良いということです。
1. ユーザーを分析する

サービスを作っていると、様々なユーザが存在することに気づきます。
例えばアプリであれば、
- インストールしてから1度もアプリを開かないユーザー
- インストール直後に購入したというものの、それ以降は一度も購入がないユーザー
- クーポンを配った時のみ購入するユーザー
生きている中で、「様々な人がいるものだ」と思う場面は多いですが、「ユーザー」となるとなぜかその視点を見失いがちになるのが不思議なところです。
ヘビーユーザーの行動を洗い出す
分析の際にはユーザーセグメントが必要です。
例えばヘビーユーザーを
- どの機能を使っているのか
- どのページを訪れるのか
- どのくらいの頻度でアプリを起動しているのか
などに分け、分析を行いなぜ彼らがそのような行動をするのかの仮説を立てます。
ヘビーユーザーの属性
「なぜ彼らはサービスを頻繁に使ってくれていて離脱しないのか」というプロダクト面の特徴、「彼らはどういう人たちでどういった生活をしているのか」などのユーザーズライフを洗い出し、
- アプリを使い始めたきっかけは何か
- 使用している端末は何か
- 人口統計的にどのような特徴があるか
のような共通項を出します。
その結果を元に「ヘビーユーザーを生むにはどうしたらいいのか」「どうしたらもっと頻繁にサービスを使ってくれるのか」を考えます。
アプリを使わなくなるきっかけ
ヘビーユーザーを分析したら次は「なぜ使わなくなるのか」を調査します。
せっかくインストールや閲覧をしてもらったのに使ってもらえないのはなぜなのか。そのユーザを取り込めたらあきらかにサービスを1も知らないユーザを1から獲得するよりは楽ですし、これから獲得するユーザーが離れなくなるスティッキネスの要素を追加することも可能です。
- 離脱率が高いページはどこか
- 他社と価格比較をして実際どうか
- 購入者がやっていて非購入者がやっていない行動はないか
などを分析することによって「なぜユーザーが離れてしまうのか」という事実を深掘ることができます。
共通項を導き出す
本に出ていた企業を例とすると、常連ユーザには
- 無料配送である50ドルを必ず超えて購買していること
- 大多数がほぼ毎回同じ商品を買っている
- モバイル版webサイトでアプリを見つけることが多い
という以上のことが見つけられました。
ここまでくればライトユーザー、ミドルユーザー、ヘビーユーザーの特徴が洗い出せる状態となり、それぞれにアプローチが可能な状態ができます。
2. 課題を解決するためのアイデア出しを行う

上記のフローで課題が特定できたらアイデアを生成します。
グロースハッカーに大事なことは「名案を思いつく秘訣は、アイデアを数多く持つことだ」とも言われています。
ここでの注意点はアイデアだけに取り付かれないことです。
Dropboxのリファラル施策やAirbnbのカメラ撮影施策も一見アイデアに見えますが、それは長い時間をかけて見つかった仮説があるからこそのアイデアにすぎません。
2-1. 仮説を立てる
仮説の立て方として大事なことは数値でとれるようにすることです。
悪い例は「再訪・再購入するユーザが少ないので、そうするようインセンティブを与えるべき」というもの。
これではインセンティブが何かそもそも議論しなければならないし、施策を立ててもどこのKPIに効くのかが一切わかりません。
良い例は「過去に購入した商品を閲覧・再注文しやすくすることにより、リピート率購入者数は20%増加すると考えられる」といったようなものです。
違いは、「どの課題を」「何で解決して」「どこのKPIに効くのか」を浮き彫りにしているところです。
この上で、工数、担当、比較データなどを考えていく手順に進むことができます。
算出の根拠は過去に行った同様の実験やwebで入手できるベンチマークデータ、新たな実験に接するユーザ数の見込み、ユーザ行動への影響の予想値などで導き出すことができます。
2-2. 施策を決めるにあたって
購入価格、購入リピート率など実験の川下にあり、実験施策から影響を受ける指標を見ることが重要です。
2-3. 優先順位づけ
アイデアを出した後は必ず点数をつけることが大事です。最初は僕もアイデアから走ってしまっていたのですが(アイデア出しは楽しいですからね)、上述のようになぜそのアイデアを実行する必要があるのか、という根拠の方が圧倒的に大事です。
一気に取り掛かりたくなる気持ちもわかるのですが、実施には時間と工数、もしかしたらお金もかかります。
そのため、必ず比較し検討できる手がかりになる点数付けが重要です。
そして、その点数付けは必ず提案者が行うことも忘れないようにしたいものです。提案者が一番その課題と解決策、そしてなぜ数値がそのように上がるのかを知っているからです。
3. ICEスコアシステムを導入しよう

ここで、ICEシステムが参考になります。
ICEスコアシステムは「Impact」「Confidence」「Ease」をさしています。
それぞれ10点満点で評価を行います。それに基づく数字は経験や実践から得た過去のデータや、業界内でのベンチマークなどの比較指標が当たります。
点数を振ることでアイデアの価値と検証結果を試算できるようになるフレームワークです。
Impact ~影響度~
施策を実行することによってKPIにどのくらいの影響が出るのかを測ります。傾向として、KPIが大きく揺らぐ施策ほど工数がかかるものが多くなるためにライトなものを織り交ぜると良いと言われています。
Confidence ~自信度~
憶測ではなく、データ分析や業界内のベンチマーク、ケーススタディ、過去の実験などの経験的根拠に裏打ちされている必要があり、それが施策がKPIを揺るがす確信度に直結します。数値的根拠が絶対です。
Ease ~簡単度~
実験にかかる事案と資源をはかる尺度です。目線の低い実験を見分けやすくしてくれるのが簡単度です。
その他にも「TIRシステム」や「PIEシステム」があるので気になる方は調べてみてください。
4. 実験施策をまとめる

分析と学習 ~テストサマリー~
上記で定めた指標から施策を打つ意思決定を行い、実験を開始します。
- 実験の名称と内容(使用した変数とターゲット顧客を含む。例えばマーケティングチャネルで実験したのか、対象はモバイルユーザか有料登録者数か)
- 実験の種類(プロダクトの機能テストかwebサイトやアプリ上のキャッチコピーの変更かなど)
- 影響、改善を受けた機能(webページやアプリのスクショ、各種クリエイティブなど)
- 鍵となる指標(実験では何の指標を改善しようとしたのか)
- 実験の時期(開始日、終了日、それぞれの曜日)
- 実験の仮説と結果(実験前のICEスコア、n数、信頼水準、統計的)
- 潜在的な交絡要因(同時期に実施していたプロモーションや季節要因、実験対象の行動に影響した可能性のあるもの)
得た結論から、実際の仮説と結果がどういう関係値にあったのか、予想と大きくずれていなかったか。
また、結果から新しい仮説やアイデア、グロースポイントが見つかるかの判断を行います。
5. グロースミーティング

グロースミーティングでは、その会社でサービスのグロースをするチームで構成され、施策ごとのミーティングを行います。
- データアナリストと重要指標をアップデートし、チームに報告。
- 結論が出た全ての実験データを収集
- 先週の活動と成果について評価(実験からわかった成長への好影響と悪影響のまとめなど)
- ドキュメント化
5-1. 施策のレビューと重点領域のアップデート
施策を振り返り、
- 主要なプラス要因
- 主要なマイナス要因
- 成長の重点領域
を分析します。ここで重要なのはチームが目標にしていたKPIと比べ、「跳値(予想と大きな高低差がある)があった場合なぜ生じたか」を考えることです。
仮説が間違っていたのか、仮説のをとりまく周辺領域に勝ち筋がありそうなのかを予測します。
5-2. 実験結果の分析から得られた学びの共有
施策を引っ張るグロースリードと、数値を分析し得た結果から新たな仮説を報告するデータアナリストから最終的な結果を発表します。
5-3. 次のグロースサイクルに向けた実験の選定
報告を基に、チームオーナーが再度点数に応じた意思決定をします。
グロースチームはこういった感じで仮説を導き、点数を付け、結果を得て、といったリズムで施策をぐるぐると回していくのです。
まとめ
伝説のグロースハッカー ショーンエリスが書いた『グロースハック完全読本』。最近本を読む時は目次から索引してから重要箇所をパラパラとさらう読み方が多いのですが、この本に関しては1ページ1ページ大切に読みたくなるほど、ワクワクし夢中になってしまう本でした。
Amazon Primeって
・無料トライアル→本登録 CVR: 73%
・初年度から2年目への継続率: 91%
・3年目への継続率: 96%
ってマジか。。いかに顧客に価値を与えているかが明確になる。
— Fumiya Miura | 三浦史也 (@fumi_12_20) November 18, 2018
これからマーケター、グロースハッカーの方はもちろん、事業の数値を伸ばしていきたい方にはAirbnbやAmazonといった著名スタートアップの事例も載っており大変勉強になる一冊です。