【シリコンバレーのエンジニアが語る】日本の労働文化 ~後編~




 

シリコンバレーの人たちの仕事に対する姿勢

ーーシリコンバレーの人の仕事に対する態度はどのような感じですか

自分の趣味に生きている人が多い気がします。

自分と同い年くらいになると、子供も家族もいるので、仕事をガツガツやるというよりは、趣味に時間を使う人が多いです。例えば音楽や自転車などです。

ポケモンGOが流行っていた時はサウスベイ(シリコンバレーの南の方)から毎週サンフランシスコまで捕まえに行っていた人もいました。

自分は去年からサックスを始めたのですが、こっちではだいたい4~6時の間に会社を出るのが普通なので練習ができます。

逆に、7時まで仕事していたら超残業と言われています。土日出勤は自分の場合は非常に稀ですね。

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驚いたのは、マネージャーがチームに「問題が起きたから申し訳ないけど誰か週末に出勤して処理してほしい」と依頼した時に、チームの1人が「ソフトボールの試合があるから行けません」と断っていて、マネージャーも「ならば仕方ない」と納得していたことです。

当時日本から移ってきた直後でしたので「この場でソフトボール!?そしてマネジャーも納得!?」と驚きましたが、さすがに今は慣れてきました(笑)

そういうことがあるので、基本的に自分のことに時間を使えますし会社も優先してくれますね


自分自身生活していくにつれ、特に週末はみんな趣味に勤しんでいるという印象を受けています。だいたいパーティーをしていたり、スポーツしたり映画を見たりしている気がします。

ーーみなさん、どのようなスタイルで働かれているのでしょうか

かなりフレキシブルです。

定時とか昼休みとか時間が決まっていないので、なんとなく8時から10時の間くらいに会社に来て、4時から6時ぐらいに帰っていく場合が多いですね。

チームの中にも、「今日はミーティングがないので家から仕事します」「歯医者へ行くのでオフィスに行きません」という人も普通にいます。

もしミーティングがあってもテレビ電話のようなものでだいたいはまかなうことができるので大きな支障はありませんしね。

チームに連絡さえすれば、自分の都合の良い形で働くことができます。仕事さえ進んでいれば誰も文句を言わないです。

会社は社員に『会社にいて欲しい』わけではなくて『仕事をしてほしい』というだけですからね。

誰も帰っていないから帰れないというのもないし、みんなが帰っているから帰らなきゃというのもないです。

基本的に、やることをやっていれば大丈夫です。

ーーシリコンバレーの会社、特にIT企業で働きたい人は少なくないと思うのですが、どういうキャリアステップを踏んだ時に、日本人がこちらで働ける可能性があると思われますか?

自分もそうですが、日本とシリコンバレーの両方にオフィスがあるような会社で社内異動するパターンが多いと思いますし、やりやすいと思います。

その後永住権が取れれば自由に転職できますし、H1Bであれば転職先の企業が受け入れてくれれば転職してもビザを引き継げます。

逆に永住権申請中は転職しにくいです。

日本人がアメリカで働く場合に限らず、海外で働くというのはビザの問題がつきまとってくるので、その分ハードルはどうしても高くなります。

日本に今まで普通に住んでいた人が突然アメリカの会社に入社するというのは、ビザの問題もありますし、引っ越し費用の問題などもありますので、不可能ではないと思いますが乗り越えないといけない困難は多いですね。

スタートアップは現在アメリカで働けるビザがない場合はよっぽどの人材でない限りビザのサポートはしてくれないのではないでしょうか。

ーー高卒の方もテックカンパニーで働いているという話を聞いたことがあります。コードさえ書ければチャンスはあるということでしょうか?

そういう例は聞いたことはないですが、エンジニアということであればイエスでもありノーでもあると思います。

会社に入ってしまえば、有名大学を出ていようが高卒だろうが博士だろうが、書いているコードで評価されるので学歴は関係ないとは思います。

しかし、入社までに至る過程においては職務経験が少ない場合は学歴は効いてくると思います。

例えば10年のキャリアがある人は、採用側としては学歴よりも直近数年間の仕事内容の方に興味があります。

しかし、新卒採用の場合は履歴書を見て、どこの大学を何の専攻で、どのくらいの成績で出たのか、どんなインターンしていたのかなどが見られます。

もちろん大学在学中に会社やサービスをいくつも立ち上げたり、アプリを作って公開したり、オープンソースプロジェクトに貢献していたりする人もいますが、そうでない場合は学歴以外に見る点がありませんからね。

そのため、新卒や実務経験が1,2年の経歴であれば、学歴は大きく効いてくるように思いますね。逆に、一度会社に入ってしまえば学歴はあまり関係ないとは思います。

とはいえシリコンバレーだと幼少期や高校生の頃などからコードを書いている人はたくさんいて、時々趣味レベルを超えたスキルを持つ人もいるため、そういう人はスキルと実績さえあれば学歴はあまり重要視されないんだと思います。

逆に言うと新卒やそれに近いキャリアが短い場合は小さいサービスやアプリでも作って公開していれば大きなアドバンテージになると思いますしそこで経験したことも就職の際に役に立つと思いますね。

シリコンバレーの名アクセラレータである”Plug and Play”。ここには多くの著名人が足を運んでいる。

息を吸うように転職する ~シリコンバレーでの働き方~

ーーシリコンバレーのスタートアップでも働かれていたんですね。

そうですね。

60人くらいいるセキュリティ関連のスタートアップで1年ほど働いていました。

でもその会社はなかなか製品が思うように売れず、会社自体が傾き始めました。

すると、チームの雰囲気が悪くなり、みんな自分からどんどん辞めていきます。事実、レイオフ(解雇)もありました。

でもレイオフは実は日本で噂されているほど多くないと思っています。もしレイオフすると、社内の雰囲気がもっと悪くなっていくからです。

また、優秀な人ほど雰囲気を悟り、自分から早めに辞めていきます。

優秀であればあるほど次の仕事を見つけるのが簡単だからです。

ーー『辞めて次へ行く』という文化はかなり日本と異なると思います。
一度入った企業で勤め上げるということをよく聞きますが、門脇さんから見て日本の労働文化はどう見ておりますか?

日本で働いていた期間は短かったですし、スタートアップだったり外資系だったりしてので正直、日本の労働文化はいまいちわからないのですが、その上でイメージとして申し上げるのであれば、新卒で入り定年まで勤め上げるというのは今は少しずつ変わっていっている印象を受けています

定年まで同じ会社で働くというのは、安定という意味ではいいのかもしれませんが、道を外れた場合に挽回するのが難しいという問題があると思います。

シリコンバレーで一番有名なVCといっても過言ではないY combinatorや、GoogleがあるのもここMountain view。1年中ほとんど晴れといった、天候の面でも人々にいい影響をもたらしている。

ーー転職が応援されているような印象を抱きますが、やはり転職は盛んなのですか?

シリコンバレーのエンジニアは転職する人が多いですね。

中には長いこと(10年以上とか)同じ会社にいる人もいますが、1年から5年の間で転職を繰り返す人が多いと感じています。

昔の同僚に誘われてその会社に勤めることになったという話もよくあります。

誘われていなくても転職しているうちに前の同僚と同じ会社で働くことになったというのも聞きます。

あとは一度別の会社に行ってまた戻ってくるという例もあります。

去られる側の会社としては応援はしていないと思いますが、チームの人や上司にしてみれば、いずれは自分も転職するし、そうやって転職してきた人を雇ってるわけですし、考えてみればお互い様というか。

会社やチーム全体としては人が辞めていくというのは良くないんですよね。

単純に人手が減るということだけでなく、その人の知識や経験がチームから失われますし、新しい人に仕事を教えてその人がフルスピードで動けるようになるまで時間もかかるので全体の生産性が落ちてしまうんですよね。

いずれにせよ、人が次々と抜けていく会社やチームは何か問題を抱えている場合が多いですし、それが継続するとなると自然とチームの雰囲気も悪くなっていきますよね。

ーー転職や企業文化を聞いている限り「好きなこと」を仕事にできている印象を受けますね。

会社や今の仕事に不満があるのに我慢して働いている人はここら辺ではほとんど見かけないですから、必然的にそうなっていくのだと思います。

もちろん全てが思い通りにいくとは限らないですが、マイナスな状態が長く続くようであれば現状を早く変えた方がいいというような考え方ですかね。

だから不満を感じた時は転職してみたりそこまでいかなくても履歴書だけでも出してみたり面接だけでも受けてみたり話を聞きに行くなどの行動を起こしてもいいかもしれません

もしかしたら給料がアップするかもしれないし、新しいところと意気投合するかもしれないし、やりたいことをやらせてくれるかもしれないですからね。

そのようにどんどん転職していくというのがこのエリアでは普通ですね。

また、転職することで裏切ったというイメージは全くつきません。むしろ「いいところが見つかったんだ」と捉えられます。

友人とは「へー、Facebookに行くんだ。今度ランチついでに見学させて」みたいな会話もあります(笑)

世界的な名門大学”Stanford University”も、Palo Altoという地域にある。やはり環境が影響しているのか、Stanford出身の起業家は非常に多い。

ーーシリコンバレーの全体の文化としてはどこが最大の特徴だとお考えですか?

隙さえあれば起業するという雰囲気を感じています。いいアイデアがあればとりあえずやってみている気がしますね。

とりあえずやってみて、うまく行かなかったらそこから考えたり、問題点を修正したりしているような気がします。

そういう文化や風習みたいなものがここにはあるのではないかなと思います。転職が普通なのも、そういう土台があるからだと思っています。

副業のような感じで自分のプロジェクトを行い、うまくいきそうになったら資金調達をして会社を辞めて本腰を入れるステップですかね。

そもそも失敗があまりリスクではないんですよね。失敗したら別のことやればいいと思っているのだと思います。

また別のアイディアでやるも良いですし、就職するのもなおよしです。元の会社に戻るのもありですね。

転職するにしてもプロジェクトで資金調達するにしても「以前こういう失敗の経験をした」というのはむしろアピールポイントです。

これからの生き方について

ーー今は何か目指しているものはあったりするのですか?

正直、昔からあまり10年後とかそういうことは考えていませんでした。

今だからやりたいこと」「今すぐやればいいことを考えています

それに、やりたいことにも色々な理由でやりたいことがあると思っています。

例えば、技術的に面白いからやりたいというのも1つの理由ですし、単に興味があってやってみたいというのも理由も1つの立派な理由だと思います。

どんな理由でも、今やりたいことに素直に従い、それを行うようにしています。

ーー日本に戻る予定は今のところあるのですか?

最初2-3年で帰ろうかと思っていたのですが、仕事環境が良いので長くいます。

でも仕事を辞めて引退した後だったら日本に戻るのもありだと思っています。

ーーやはり仕事環境は住む場所を選ぶ大きな選択軸になりますね

今の仕事と同じような仕事で同じような給料で同じくらいのやりがいがあったり、自分の強みを大きく活かせるような仕事が日本にあれば日本で働くことも考えていますが、なかなか難しいと思ってしまうのが現状です。

そのため今の所はアメリカで働こうと思っています

もう1つの理由としては、日本の経済力が落ちてきているからというのがあります。

10年前くらいのスタートアップは、まずはアメリカで展開して、うまくいったら次はヨーロッパか日本へ展開するという感じだったのです。

その場合に日本が選ばれる確率が高かった理由は、ヨーロッパは言語が複数あることに対し、日本は日本語という言語1つであったため、当時は日本が選ばれる確率が高かったのですが、今アメリカの次は中国に展開していきます

中国でビジネスするのは非常に難しいのですが、日本も同様に難しいといわれており、どちらも難しいことであるなら、マーケットが大きい中国の方が選ばれてしまうんです。

これから何かに挑戦したい人へ向けて

ーー自分も学生なので学生と話す機会も多いのですが、やりたいことがない学生や、将来に迷っている人が多くいると思います。

そういう時はとりあえず今、興味のあることをやってみるのがいいと思います

人によるとは思うのですが中には「自分は絶対にこれがしたい!」という人もいて、そういう人はそれをするためにこれをやって、次はあれをやるためにそれをするといったような計画を立てている気がします。

だけど、そうではなくて何をしていいのかわからないのであれば今やりたいことをやっていればいいと思います

別に大きくなくても、興味のあることについて勉強してみたり触れてみたりするといいと思います。

例えば『海外に行きたい』というのが大きな目標の1つの時に、海外に行くためにどうするか。

あるいは『エンジニアになりたい』『マーケティングをやりたい』と言う時に、そのためにはどうするか。

行動する順番は色々あると思っています。

それに沿ってやってみると、それにはまっていってやりたいことが見つかったり、反対に、道が逸れたりする場合もあります。

しかしそれは他に興味が出たということだからいいと思っています

それに、10年前や5年前の興味と今の興味は全然違っていると思います

また、5年後、10年後もおそらく今と違うことに興味を持つと思います。

そういう意味で今やりたいことを全力でやってみることはいいんじゃないかなと思っています。

ーーありがとうございます。最後になりますが、『これから挑戦したい人』へ向けてメッセージをお願いいたします。

自分の人生なので自分の好きにすればいいと思います(笑)

海外の例を引っ張ると、『海外へ行きたい』というのも、どのくらい具体的に行きたいのかによると思っています。

なんとなくの憧れなのか、本気なのか。

例えば小さい頃にプロ野球選手になりたいとは思うけど、野球部にも入っていないし野球もしていなければプロになれるわけはないじゃないですか。

本当にプロになりたい人は強豪校の野球部に入り、努力して甲子園を狙います。

だから、どのくらい本気で行きたいのかが大事になってくると思っています。

もし本気なら、今すごく海外には行きやすくなっているのもありチャンスではあると思います。

ただ待っているだけで、「なんとなく行きたいなくらいの覚悟だったら難しいのではないかと思います。

どちらかというと、スキルもないし英語も話せないけれど、「とりあえず行ってみる」という人の方が実際に来ていると思っています。

「もうちょっと英語うまくなってから」「いい機会があれば」「もうちょっと経験を積んでから」という場合は、本当に行きたいと思ってない印象を受けてしまうことが多いです。

英語もそうですし、他のことでも日本で経験したことと、海外で経験することは大きく異なるのが現実です。

英語ですと、自分は3年でなんとなく相手の言っていることが理解できるようになってきて、電話に躊躇なく出られるようになるのには7~8年時を要しました。特に最初の2年は英語に苦労しました。

なので、海外関わらず、まず何か本気でやってみたいことがあるのであればそれに向かって行動してみたり本気度を確かめてみるのがいいと思います

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